「小さな家」の気づき



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建築家の作品解説、あるいは自作品のための理論武装

狭小住宅という言葉が一般的になったように、家を建てる際、敷地や周辺環境に関する諸条件を克服することが大きな課題となる。こういった問題に真っ向から取り組み、何らかの実用的な解決策が提示されるのを期待していたのだが、この本で述べられるのは、建築の在り方としての概念の問題であった。もっとも、「英雄的な建築家」を自称する試みに対し、建築を志す者ならともかく、素人である私の期待が矮小であったに過ぎないのだろう。

建築家である著者は、制限というネガティブな意味が付与された「条件」という言葉を用いるのを止め、建築を構成するための「素材」の一つであると「定義」し直す。そのことによって、良し悪しといった二元論から脱却し、与えられた「素材」をどう活かすかといったような観点で、多様な「パラメータ」を模索している。そこで「観察」によって、あるべき建築の姿と「素材」の相互依存性をあぶり出し、意識的に建築に「定着」させることで作品に取り組んでいる。
建物が条件に束縛されていたり、集合の一部としての脈絡を失ったりしている(これはランドスケープ・デザインの視点と重なる)という指摘や、建物が従来無かったような多様性をすでに無意識に取り込んだりしているといった実例は、確かになるほどと思わせる。とはいえ、このようなアプローチで様々な「素材」と幅広く格闘している建築家なので、自身の「小さな家」を建てておらず、住む側の気付きが得られてないのが残念だ。

芸術家は作品がすべてだと言って説明を拒むことがあるが、本書は建築家自らによる入念な解説集といえる。しかし、本書に写真はそれほど多くないため、作品をよく知らずして理屈だけを聞かされている気もしてくる。著者のもってまわった表現が、どのように具現化されて建物に落とし込まれ、どれくらいの効果を発揮しているのか、せめて写真ではもう少し確認させて欲しかった。
定義する力

本来建築は言葉とは遠い距離を置いた存在である。しかしそれを知りながらも建築家は言語化を試みてきた。それは、あるときは有効に思えたり、時にはまったく無意味な行為に見えた。 しかしその評価軸は結局、読者個々人が「実感できるか」の次元の問題であり、それに成功した言説が今も生きたものとして評価されているのだろう。 では、「実感できる」というのはどのような言説を指すのか。その答えの一つが、この書物にある。 設計プロセスから得られた、生々しいまでの「楽しみ」を言語によって定義していく。「オン/オフ」「ズームバック」「素材性」などはその例である。それら定義によって、彼の建築がまるで「観察と定着」のやりとりそのもののようにに浮かび上がってくる。 言語化の新しい方法とは、建築を介した小説なのかもしれない。



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